過去があるから現在がある

         第五話

        親友とは。

 

 腕が外れた瞬間としきは何が起こったかわからなかった。

 

 当然小学1年生のとしきには初めての体験であった。

 

 腕を外した当事者でもあるけんたは外れたかどうかもわからず引っ張り続けていた。

 

 するととしきの腕には激痛が走った。

 

 「痛い!!やめて!離して!」

 

 号泣しながらけんたに訴えた。

 

 けんたは泣いているとしきを見てやっと異変に気づいた。

 

 「としき!大丈夫か!としき!」

 

 けんたから必死に声をかけられるが、腕が痛すぎて何も耳に入ってこない。

 

 けんたは焦っていた。正直言って親にバレたくない、怒られたくないという気持ちが先行してとしきの腕のことより、自分のことを心配していた。

 

 そんな感情を持つ親友を本当に親友と呼んでいいのだろうかと、疑問に思う。

 

 「としき!泣くな!男だろ!そんなもんすぐ治るって!」

 

 腕が外れてるとは思ってもいないけんたは必死に慰めるしかなかった。

 

 腕が外れた場合の対処法として腕の骨を無理やり元の位置に戻すというのがあるが、そんなこと小学1年生の子供が知る由もない。もう病院に行くしか治す方法はない。

 

 必死に慰めても変わらない状況にけんたの緊張はどんどんピークに達していく。

 

 そんな中、家にいたとしきの母このりは2人の異変に気づき、部屋にやってきた。

 

 「としきどうしたの!大丈夫??けんた!何があったの!?」

 

 けんたはどう言い訳し、隠そうか焦って何も言葉が出てこない。

 

 としきは痛みが激しすぎて何も言葉でない上に、状況整理ができていない。

 

 このりは何もわからない状況で「腕が痛い!動かない!」というとしきの声で、救急車を呼ぼうとすぐ電話をかけた。

 

 その時のけんたの心情は最悪だった。